ガソリンにも「冬用」と「夏用」がある—その理由と性能の違い

ガソリンは寒い季節と暑い季節で「冬用」と「夏用」に切り替えられていることをご存じでしょうか。軽油の寒冷地仕様が広く知られている一方で、ガソリンの季節別仕様についてはあまり注目されることがありません。この切り替えは特にアナウンスされることもなく行われていますが、実は重要な役割を果たしています。

冬用ガソリンが必要な理由

ガソリンは極低温でも凍ることはなく、凝固点は－100度とされているため、軽油のような凍結リスクはありません。しかし、寒い時期にはガソリンの揮発性が低下し、エンジンの始動性や性能に影響を及ぼします。このため、冬用ガソリンは揮発性を調整することでこれを補っています。

• 揮発性の指標「蒸気圧」
  ガソリンの揮発性は「蒸気圧」で測定されます。蒸気圧が高いほど揮発性が高く、気化しやすくなります。冬用ガソリンは夏用に比べて蒸気圧が高く設定されており、低温時でもエンジンが始動しやすくなるよう調整されています。
• 夏用ガソリンの特性
  夏場には蒸気圧が低く設定されます。これは、高揮発性のガソリンが暑い時期に気化しすぎると「ベーパーロック（蒸気閉塞）」が発生し、アイドリングの不安定や加速性の低下を引き起こす可能性があるためです。

季節ごとの切り替え時期

ガソリンの切り替えは以下のように行われます。

• 冬用ガソリン
  毎年10月下旬から順次切り替えが始まり、気温の低下に備えます。
• 夏用ガソリン
  5月ごろに切り替えが行われ、気温上昇への対応をします。

この切り替えは日本産業規格（JIS）の蒸気圧基準に従い、各社が生産したガソリンをガソリンスタンドで供給することで自然に行われています。

冬場にガソリン消費量が増える理由

冬季にガソリンの消費が増えるのは、車両が暖房を効かせるためにエンジン回転数を上げることが主な原因です。冬用ガソリン自体が消費量に影響を与えるわけではありません。

まとめ

ガソリンには夏用と冬用があり、季節ごとの気温に合わせて蒸気圧が調整されています。この切り替えにより、エンジンの始動性や性能が安定し、快適なドライブが可能になります。軽油の寒冷地仕様ほど目立った注意喚起はありませんが、知らないうちに重要な役割を果たしている点に注目すると、ガソリンの奥深さが見えてきます。

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