動粘度とHTHS粘度の違い—HTHS粘度の重要性とは？

エンジンオイルは、エンジン内部のさまざまな部品を潤滑する重要な役割を担っています。しかし、潤滑が必要な部品ごとに接触速度やかかる圧力は大きく異なり、それに応じた性能がオイルに求められます。ここでは、動粘度とHTHS粘度の違いに注目し、HTHS粘度の重要性を解説します。

動粘度とHTHS粘度の違い

• 動粘度（Kinematic Viscosity）
  動粘度は、オイルの粘り気を表す一般的な指標です。通常は40℃や100℃の温度条件で測定され、エンジンオイルの流れやすさや汎用的な性能を示します。市販のオイルでは「0W20」や「5W30」といった表記で、温度条件下での粘度特性を示しています。
• HTHS粘度（High Temperature High Shear Viscosity）
  HTHS粘度は、150℃という高温・高せん断速度の条件下でのオイルの実効粘度を測定したものです。この環境はエンジン内部の過酷な条件を再現しており、ピストンリング、コンロッドベアリング、カムリフターといった高負荷部品の潤滑性能を示します。

HTHS粘度が重要な理由

1. 過酷な条件下での油膜維持
   高せん断速度では、粘度指数向上剤が引き延ばされ、オイルの粘度が大幅に低下します。このとき、HTHS粘度が高いほど、油膜の厚さが維持され、部品の摩耗や焼き付きのリスクが軽減されます。
2. エンジン保護
   HTHS粘度が不足していると、ピストンやベアリングに十分な潤滑が行き渡らず、異常摩耗や故障を引き起こす可能性があります。特に高負荷エンジンやスポーツ走行時にはHTHS粘度がエンジン寿命を左右します。
3. オイルの性能の指標
   同じ粘度表記（例：5W30）でも、HTHS粘度はオイルによって異なるため、オイル選びの際にはHTHS粘度を考慮することが重要です。

HTHS粘度の表記について

市販のオイルでは動粘度は一般的に公開されていますが、HTHS粘度を公開していない製品も少なくありません。これは消費者にとって選択肢を狭める要因となるため、HTHS粘度も粘度とともに公開されるべき重要な情報といえます。

オイル選びのポイント

• 使用条件を考慮する
  通常の街乗りや低負荷走行では動粘度が重要ですが、高負荷や高温が予想される環境ではHTHS粘度が高いオイルを選ぶことが推奨されます。
• エンジン仕様に合わせる
  エンジンの設計や推奨オイルに基づき、適切な動粘度とHTHS粘度を兼ね備えた製品を選択しましょう。

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